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2025年11月8日スタッフブログ

人をおもう

そうとう昔・・・子供のころに読んだお話です。もしかしたら小学校の教科書に載っていたお話かもしれません。
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その昔、北の方に一つの国がありました。小さな領土ではありましたが、お殿様の施政のおかげで領民は豊かに暮らしておりました。家臣の信頼も厚く、皆がお殿様を慕っておりました。「お殿様は大事なお方。ご懸念のなきように・・・何かあっては大変だ。」と家臣や城下の人々はお殿様のお体に細心の注意を払っていたのですが、実はお殿様にはどうしてもその気持ちが辛く感じることがありました。

外に出ようとすると「暑いのでおやめください」「寒いのでお体に障ります」「何かあっては大変ですから」
食事をしようとすると過剰なまでに毒見をされ、冷めたものしか食することができません。
暖かいお茶を飲もうとするとわざわざ京から取り寄せた薄手の茶碗で供される。手の熱さを我慢して平静を装う。

一事が万事この有様でしたが、お殿様も皆の気持ちを慮って何もおっしゃいませんでした。

あるとき所用で領内を見回っておられたところ突然の大雨にみまわれ、一同雨宿りのために粗末な百姓家で暖をとることになりました。突然の行幸に百姓一家は非常に驚きましたが、できる限りのもてなしをしようと殿さまにキノコのみそ汁を供しました。粗末な木椀によそわれたこの一品を殿さまはたいそう喜ばれました。椀を持った手が熱くない。食事が温かい。何よりもこの一生懸命なもてなしの気持ちがひしひしと感じられてうれしい。

殿さまは意を決して家臣に申されました。
「主君を思ってくれる気持ちはうれしいが、本当に私のことを考えてのことであればこの百姓のもてなしを手本にしてほしい。雨に濡れはしたが、今日は本当に良い日であった。」

家臣はハッとしました。自分たちは本当に殿さまの気持ちを思っていたのであろうか。殿さまに大事なければ自分たちの身も安泰・・・もしかしたら我が保身を第一に考えて殿さまのことを案じていたのではないのか?

「ほとけさまごと」・・・先々代はウチの仕事をこう表現していました。人のことをおもうのはなかなかに難しいものです。その気持ちがお客様にお伝えできているかどうかわかりませんが、何かにつけてこの話を思い出します。