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2021年6月3日スタッフブログ
仏壇屋のお仕事
昨日は、とある寺院様所有のお掛け軸の表装の修復品を納品いたしました。
もちろん、わたくし共で直接修復作業をすることはありません。
専門の職人さんが時間をかけて丁寧に仕上げてくださいます。
残念ながら納品状況を撮影することは許されませんでしたが、こういう時に寺院様と職人さんの橋渡しをするのも我々仏壇・仏具を取り扱う者として大事な仕事の一つです。京都という土地柄には本当に助けられています。何代にもわたって技術を磨いてきた方々が多数おいでになるので安心してお任せすることができます。また、そのような方々とお話しさせていただくことで毎回勉強になっております。
僭越ながら、わたくしはもともと設計職でした。「設計」というとなんだかいつも図面やコンピュータとにらめっこしてる職業のように思われるでしょうが、実は仕事の半分以上は現場で行います。この経験が今になって生きていまして、様々なケースに対しての解答を見つけることができているように思います。仏壇屋なのに建築関係の事務所で仕込み仏間の提案をしたこともございます(正直、もうけは全くありませんでしたが・・・笑)。そうやって様々な職種の方々と現場で知り合いお話をさせていただくことは、実は大きな財産なのです。
本日はお仏壇の修理品をお預かりしました。客先の品物の一部を取り外して持ち帰り、契約の工房で修理します。
修理の方法も様々です。
予算がない場合であれば簡単な修理で済ませることもありますが、実は非常に心配です。「形さえ元通りになれば」とおっしゃるお客様もいらっしゃいますが、「耐久性」という面では未知数です。念入りに作業した方が結局は安上がりになることもしばしばです。よく説明をして納得していただくのが一番大事なことだと肝に銘じております。
さて、「よく話す」というのは非常に大事なことです。山崎豊子さんが書かれた、「白い巨塔」のドラマをご覧になったことがおありでしょうか?
江口洋介さん演じる里見先生に弁護士役の上川隆也さんがこのような質問をします。
「医療の現場において患者に接するとき一番大事なことは何ですか?」
里見先生:「それは『よく話す』ということではないでしょうか。患者さんが何を望んでおられるのか、どうしたいのかとことん話を聞くことです。」
医療用語でいうところのインフォームド・コンセントですね。手術をはじめとする治療を行うにあたって、患者の同意を得ることが非常に大事であるということです。強引に自分の治療方針についての主義主張を患者に押し付けてはならない。ドラマの中ではこのことが裁判の争点となって、主人公の財前五郎は裁判で敗北を喫することになります。
今このときも最前線で奮闘しておられる医療関係医者の皆様に比べれば、我々の仕事はのどかなものかもしれません。しかしお客様の声にきちんと耳を傾けて満足した結果を提供することはどんな職業にも共通することですし、これからも心に留めて仕事をしてまいります。