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2022年7月2日スタッフブログ

技術と戦略【心がまえ】

数年前までテニスを趣味としておりました。子供のころからの練習期間を含めるともう40年以上のキャリアになったでしょうか。残念ながら今は体力的な問題もあって辞めてしまっておりますが、使用していたテニスラケットはいまだにクローゼットにしまってあります。なんか捨てられないんですよね・・・。

今のようにネット動画がなかった時代は「技術書」と呼ばれる書籍が本屋さんに並んでいました。フォアハンドはこうやって握ってこうやってスイングして、サービスはこういう気持ちでトスあげてこういうひじの使い方・・・まあ、いろんな人がいろんなことをしたためてまました。コマ割りの写真が載ってるのはもはや常識。下手するとCDーROMに焼かれた短い動画までついてくる始末。挙句の果てには自分の開催しているテニススクールへの誘導まで堂々と巻末に載せている本までありました。

そんな中、アメリカの引退したあるトッププレーヤーがポロっと一冊の本を出しました。

‘ Winning Ugly ‘・・・・・・この本を書いたのは ブラッド・ギルバート という方です。

テニスを昔からやってないと知らないくらいの地味なプレーヤーですが、確か世界ランキング4位くらいまで登ったことがあったはずです。そのころでもテニスにおいてトッププレーヤーになるためには、年少期からひたすらテニスだけに打ち込まないと将来はないという世界でした。しかしこの方は大学で勉学との両立をしながらプロとして活動するようになった異例の人です。

この人のフォームを見てもさして目を見張るものでもなく、ほかの人のようなすごいショットを打つわけでもない。でも、ゲームが進んでいくとなぜか勝ってしまっている・・・そんな不思議な人でした。

この本にはテニスのフォームやショットの解説写真などは何もなく、ひたすら活字が並んでいます。その中で彼が説くのは「戦略」です。勝っている(負けている)時はこうしなければいけない。スコアによってリスクの高低を考えて打つコースを決めなさい。こういう時の相手の心理はこうだ。先を読んで自分のプレーを決めなさい・・・。

表題の ’Winning Ugly’ の意味は「かっこ悪く勝つ」です。

要はプロとしてだけではなく、一プレーヤーとしてテニスというのは勝たなければならない。その目標のためだけの戦略本だったのです。そして、彼はこの戦略をもとにプロテニスプレーヤーとしての生計を立ててきたということです。この方の説く内容を考えたとき、どっちかというと彼は実業家として有能だったんじゃないかっていう感じさえしてきます。

先を読んで戦略を立てることや相手の心理を読むということは私も常々心がけていますが、なかなか実際にうまくいくレベルまで昇華できません。そういう意味で過去と現在を見ることはできても未来を予測して行動を決めることは非常に難しいものだなぁと思います。プレーヤーとして見直すべき人ですが、経営においてもお手本とすべき人かもしれません。

余談になりますが、有名女優との結婚で公私ともに堕落しテニスプレーヤー生命の危機にあったアンドレ・アガシ氏が再び世界ランキング1位になれたのはギルバート氏のコーチングあってでした。何をどうやったのかは知る由もありませんが、この人がコーチに就任してからのアガシはすさまじい復活を遂げました。あまり話題にはなりませんでしたが、後年ギルバート氏は招待コーチとして錦織圭選手の指導もしています。

名選手必ずしも名指導者にあらず・・・彼に限ってこの言葉は当てはまらないでしょう。