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2021年4月10日お役立ち情報

お位牌に刻む「お戒名」について(後編)

皆さまはお戒名をいただく時ってどうしたらいいとお考えでしょうか?

生前の人となりや職業・趣味などをお上人様にお伝えしてお戒名をお考えいただく・・・さて、その際にです。

「是非とも格の高い、いいお戒名をつけてもらわなきゃ!」

なるほど。じゃあ、そういう場合はどうすればいいでしょうか?
「そりゃあ、お戒名料を多めに支払ったらいいんちゃうの?」

 

 

 

えーと、ここなんですよね。誤解されてる方が多いんですが

『お戒名料』というものは存在しません!
「えぇ〜!だって、親戚の人のときもお戒名のお金払ってたで?」

 

解釈の違いなのかもしれませんが、お戒名は「お金を払って授かる」ものではないんです。
ここである奥様のお話をさせていただきましょうか。ご主人が亡くなられ、弊店がお位牌を作らせていただきました。

お宅までお届けしましたところ奥様がこのようにお話しされました。


「あのな。私、お寺(菩提寺)のお手伝いに行こう思うてんねん。近所やし、主人の葬式でお世話になったから。」
それは結構なことだと私も賛成したのを覚えております。

それから10年以上経った時、息子さんからお位牌のご依頼がありました。その奥様のお位牌でした。
先に亡くなったご主人と連名のお位牌に作り替えたいとのご意向でしたが、その時息子さんが青い顔でこうおっしゃったのです。

「これ見てください。親類に聞いたらものすごい格の高いお戒名らしいんです。それもお袋だけじゃなくて親父の戒名まで同じように・・・いくら包まなあかんか、見当つかへんのですわ。」

御住職にお尋ねになった方がよろしいと思いますよ、とだけ申しました。

その後、お位牌が出来上がった時にもう一度息子さんとお話しする機会がありました。以下は息子さんからおうかがいしたお話です。

奥様は毎日のようにお寺の内陣やお庭のお掃除をされ、遠方から嫁いできた若住職のお嫁さんが寂しくないようにと話し相手になり、マタニティーブルーになった時も親身に相談に乗っておられたようです。赤ちゃんが産まれお嫁さんの里帰りが終わると、毎日お寺に行って子育てをお手伝い。御住職の奥様は既に故人でしたし、この方のお力添えはお寺にとって非常にありがたいものだったでしょう。その後お歳を重ねられても、奥様は毎日お寺の朝のお勤めにだけは参加されていました。

御住職いわく「うちの跡継ぎ(=お孫さん)が無事に生まれ育ったのはこの方のお力添えあってのことです。毎日の勤行も熱心にされ、私たちにとっては家族同然かそれ以上の大事なお方でした。御本山にも掛け合って是非とも、とこのお戒名をつけさせていただきました。ご寄付はお母様から充分すぎるほどいただいたと思っております。当山へのあらためての寄付は必要ありません。」

お戒名をいただくというのはこういうことなのではないかな・・・と思いました。そうなんです。『お戒名はお金で買う』物ではないんです。

世間一般で言う「戒名の格」というのは、その方が仏門に帰依し折にふれお寺へのご奉仕をした証のようなものです。お寺とのご縁が薄い・もしくは初見なのに、亡くなってからいきなり「いいお戒名を!」と言われたってお寺側も困りますよね。だったらせめて寄付をしてくださいと。一部の方々はその額を「お戒名の代金」と誤解しておられるのではないでしょうか。

お身内の見送りは寂しいことですが、葬儀の後を穏やかな優しい日々にするためにも是非とも知っておいていただきたいと思います。